この記事でわかること
- DebitとCreditは「借りる・貸す」ではなく、単に左と右を指す記号であるという大前提
- 5つの要素(資産・費用・負債・純資産・収益)ごとに、どちらに書くと増えるかを1枚にまとめたマトリクス
- 覚え方の型(Debitで増えるのは資産・費用・配当、Creditで増えるのは負債・純資産・収益)
- 英文仕訳の書き方の作法(縦に書く・Creditは字下げ・$記号は付けない・Narrationを添える)
- 基本仕訳10例+決算整理仕訳10例=英文仕訳20例を、日本語の仕訳と対比して掲載
- 実務でよくある間違い5つと、「デビクレが合わない」と言われたときの確認手順
著者情報:しわすゆう|USCPA(米国公認会計士)。大学在学時にアビタスのUSCPA講座を受講しUSCPAを取得。新卒でBIG4監査法人に就職し会計監査を3年経験。現在はコンサル会社に勤務。
最終更新日:2026年8月30日
「英文仕訳のDebitとCreditがどちらか分からなくなる」「日本語の仕訳はできるのに英語になると迷う」という方に向けた記事です。
結論から言うと、DebitとCreditに「借りる・貸す」という意味を求めるのをやめると、迷いはなくなります。
Debitは左、Creditは右。それだけです。日本語の「借方・貸方」も同じで、言葉の意味と処理の内容は関係ありません。
そのうえで覚えるのは1つだけ。Debitで増えるのは資産・費用・配当、Creditで増えるのは負債・純資産・収益です。この対応さえ頭に入れば、英文仕訳は日本語の仕訳とまったく同じ手順で切れます。
本記事では、この原則をマトリクスで示したうえで、英文仕訳20例を日本語の仕訳と対比して掲載します。
会計英語の全体像は「英文会計入門|USCPAの前に押さえる5つの土台と学習順序」、勘定科目の英語は「会計英単語100選|BS・PL・仕訳の英語を優先度順に整理」で扱っています。
DebitとCreditは「左と右」の記号にすぎない
DebitとCreditは、それぞれ勘定の左側と右側を指す用語である。語源をたどると銀行業務における債権・債務の記録に行き着くが、現代の会計処理では「借りる・貸す」という意味は一切ない。日本語の「借方・貸方」も同様で、意味を考えるほど混乱する。左と右の記号と割り切るのが最短である。
| 用語 | 略記 | 位置 | 意味 |
|---|---|---|---|
| Debit | Dr. | 左側 | 借方(意味は考えない) |
| Credit | Cr. | 右側 | 貸方(意味は考えない) |
Dr.とCr.の略記についても補足しておきます。
Debitの略がなぜ「De」ではなく「Dr」なのかは、Debit
Record(借方記録)の略という説明が一般的です。Cr.も Credit Record
の略とされます。
実務では「デビクレ」と略して呼ばれることが多く、経理部門で「デビクレが合わない」と言えば、借方と貸方の合計が一致していないという意味です。
増減の向き|5要素マトリクス
Debitで増えるのは資産(Assets)・費用(Expenses)・配当(Dividends)、Creditで増えるのは負債(Liabilities)・純資産(Equity)・収益(Revenues)である。これは会計等式(Assets
= Liabilities +
Equity)の左辺と右辺に対応しており、暗記ではなく構造から導ける。
| 要素 | 増えるとき | 減るとき | 覚え方 |
|---|---|---|---|
| Assets(資産) | Debit | Credit | 会計等式の左辺 |
| Expenses(費用) | Debit | Credit | 純資産を減らす→左 |
| Dividends(配当) | Debit | Credit | 同上 |
| Liabilities(負債) | Credit | Debit | 会計等式の右辺 |
| Equity(純資産) | Credit | Debit | 会計等式の右辺 |
| Revenues(収益) | Credit | Debit | 純資産を増やす→右 |
英語圏では、Debitで増える3つの頭文字を取って「DEA」(Dividends,
Expenses, Assets)、Creditで増える3つを「LER」(Liabilities,
Equity, Revenues)と覚える方法が知られています。
日本語の簿記を学んだ人は、すでにこの構造を知っています。「資産の増加は借方」という知識がそのまま使えるため、覚え直しは不要です。
会計等式との関係は「英文会計入門|USCPAの前に押さえる5つの土台と学習順序」で扱っています。
英文仕訳の書き方|日本と違う4つの作法
英文仕訳は、日本の簿記のように借方・貸方を横に並べず、上下に縦に書く。Debitを上、Creditを下に置き、Creditは行頭を少し右にずらす(インデントする)。金額に$記号は付けず、必要に応じて摘要(Narration)を添える。
| 項目 | 日本の簿記 | 英文会計 |
|---|---|---|
| 並べ方 | 借方と貸方を横に並べる | 縦に並べる(Debitが上、Creditが下) |
| 字下げ | なし | Creditの行を右にずらす |
| 通貨記号 | なし | $は付けないのが通例 |
| 摘要 | 摘要欄 | 仕訳の下に Narration(説明) を括弧書き |
具体例で見ます。建物10,000を現金で購入した場合です。
日本の簿記:
(借)建物 10,000 /(貸)現金 10,000
英文会計:
| Debit | Credit | |
|---|---|---|
| Building | 10,000 | |
| Cash | 10,000 | |
| (To record purchase of building) |
実務のシステム上では、Dr./Cr.
の列に金額を入力する形式が多く、紙に書く機会は減っています。ただし、メールや会議で仕訳を説明するときは「Dr. Building
10,000 / Cr. Cash 10,000」という書き方が使われます。
基本の英文仕訳10例
日常的な取引の仕訳を10例挙げる。いずれも日本語の仕訳と考え方は同じで、勘定科目の英語と方向だけを確認すればよい。金額はすべて仮の数値である。
| No | 取引 | Debit | Credit |
|---|---|---|---|
| 1 | 現金売上 1,000 | Cash 1,000 | Sales 1,000 |
| 2 | 掛売上 2,000 | Accounts Receivable 2,000 | Sales 2,000 |
| 3 | 売掛金の回収 2,000 | Cash 2,000 | Accounts Receivable 2,000 |
| 4 | 掛仕入 800 | Inventory 800 | Accounts Payable 800 |
| 5 | 買掛金の支払 800 | Accounts Payable 800 | Cash 800 |
| 6 | 給与の支払 500 | Salaries Expense 500 | Cash 500 |
| 7 | 家賃の支払 200 | Rent Expense 200 | Cash 200 |
| 8 | 備品の購入(現金)3,000 | Equipment 3,000 | Cash 3,000 |
| 9 | 借入 5,000 | Cash 5,000 | Notes Payable 5,000 |
| 10 | 株式の発行 10,000 | Cash 10,000 | Common Stock 10,000 |
No.1とNo.2の違いが、売上の仕訳の基本です。
現金で受け取ればCash、後日回収ならAccounts
Receivable(売掛金)。貸方はどちらもSales(売上)で変わりません。
売上原価の計上を同時に行う場合(継続記録法)は、次の仕訳も切ります。
| 取引 | Debit | Credit |
|---|---|---|
| 売上に対応する原価 600 | Cost of Goods Sold 600 | Inventory 600 |
決算整理仕訳10例
決算整理仕訳(Adjusting Entries)は、発生主義(Accrual
basis)に合わせるための仕訳である。英文会計でも、未収・未払・前払・前受・減価償却・貸倒引当金という日本と同じ論点を扱う。
| No | 内容 | Debit | Credit |
|---|---|---|---|
| 11 | 減価償却 500 | Depreciation Expense 500 | Accumulated Depreciation 500 |
| 12 | 貸倒引当金の設定 60 | Bad Debt Expense 60 | Allowance for Doubtful Accounts 60 |
| 13 | 未払費用の計上 100 | Salaries Expense 100 | Accrued Liabilities 100 |
| 14 | 未収収益の計上 50 | Accrued Revenue(Receivable)50 | Service Revenue 50 |
| 15 | 前払費用の振替 80 | Insurance Expense 80 | Prepaid Insurance 80 |
| 16 | 前受収益の振替 120 | Unearned Revenue 120 | Service Revenue 120 |
| 17 | 棚卸資産の評価減 40 | Cost of Goods Sold(または Loss)40 | Inventory 40 |
| 18 | 法人税等の計上 320 | Income Tax Expense 320 | Income Taxes Payable 320 |
| 19 | 無形資産の償却 30 | Amortization Expense 30 | Accumulated Amortization 30 |
| 20 | 配当の宣言 150 | Dividends(Retained Earnings)150 | Dividends Payable 150 |
No.11で注意したいのは、貸方がAccumulated
Depreciation(減価償却累計額)である点です。
固定資産そのものを直接減らさず、評価勘定(Contra
account)を使って間接的に控除します。同じ構造がNo.12の貸倒引当金(Allowance
for Doubtful Accounts)にも当てはまります。
| 評価勘定(Contra account) | 控除する対象 |
|---|---|
| Accumulated Depreciation | Property, Plant and Equipment |
| Accumulated Amortization | Intangible Assets |
| Allowance for Doubtful Accounts | Accounts Receivable |
| Treasury Stock | Stockholders’ Equity |
英文の貸借対照表でこれらが括弧付きで表示される理由は、この評価勘定の構造にあります(「財務諸表(財務三表)の英語表記|英文BS・PL・CFの読み方」)。
よくある間違い5つ
英文仕訳で起きる間違いは、単語ではなく構造の理解に起因することが多い。①評価勘定を使わず資産を直接減らす
②AccruedとPrepaidを逆にする ③Revenueと入金を同時と考える
④費用と支出を混同する
⑤貸借の合計を確認しない、の5つが代表的である。
| 間違い | 何が起きるか | 正しい理解 |
|---|---|---|
| ①資産を直接減らす | 減価償却でPP&Eを直接減らす | Accumulated Depreciation(評価勘定)を使う |
| ②AccruedとPrepaidの逆 | 前払と未払を逆に計上 | 支払いが先ならPrepaid(資産)、費用が先ならAccrued(負債) |
| ③収益=入金と考える | 掛売上を計上しない | Accrual basisでは、入金と収益計上は別 |
| ④Expense と Expenditure の混同 | 設備投資を費用に計上 | 支出でも資産になるもの(CapEx)がある |
| ⑤貸借を確認しない | デビクレが合わない | Debit合計 = Credit合計を必ず確認 |
特に②は英文会計で最も多い誤りです。
覚え方は単純で、「先に来たほうで決まる」です。
| 順番 | 勘定 | 分類 |
|---|---|---|
| 支払いが先・費用が後 | Prepaid Expense(前払費用) | 資産 |
| 費用が先・支払いが後 | Accrued Expense(未払費用) | 負債 |
| 入金が先・収益が後 | Unearned Revenue(前受収益) | 負債 |
| 収益が先・入金が後 | Accrued Revenue(未収収益) | 資産 |
「デビクレが合わない」ときの確認手順
実務で貸借が一致しないときは、金額のミスより「方向のミス」であることが多い。確認は、①差額を2で割ってみる
②その金額の仕訳を探す
③方向が逆でないか確認する、という手順が最も速い。
| 手順 | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 差額を確認する | 金額そのものが手掛かりになる |
| 2 | 差額を2で割る | 割った金額の仕訳があれば、方向が逆の可能性が高い |
| 3 | 差額が9で割り切れるか確認 | 桁の入れ替え(転置)の可能性 |
| 4 | 該当仕訳のDr./Cr.を確認 | 方向を修正 |
| 5 | 転記漏れを確認 | 片側だけ転記されていないか |
「差額を2で割る」は実務で最もよく使う確認法です。
たとえば差額が200なら、100の仕訳を借方と貸方で逆に入れている可能性があります(本来Credit
100とすべきところをDebit 100とすると、差額は200になります)。
筆者も監査法人時代、クライアントの試算表が合わない場面でこの手順を使っていました。単純ですが効きます。
USCPAではどう問われるか
USCPAのFARでは、仕訳そのものを書かせる問題より、「この取引の結果、どの勘定がいくら増減するか」「期末残高はいくらか」を問う形式が中心である。したがって、仕訳を切る速度より、取引から勘定への影響を即座に判断できることが重要になる。
| 問われ方 | 求められる力 |
|---|---|
| 取引から期末残高を計算させる | 仕訳の方向を即座に判断する |
| 誤った処理を訂正させる | 正しい仕訳との差分を考える |
| 決算整理の影響を問う | 未収・未払・前払・前受の理解 |
| 財務諸表への影響を問う | 仕訳がどの表のどこに出るか |
「仕訳を書く」のではなく「仕訳の結果を頭の中で追う」訓練が有効です。
筆者の学習でも、最初は仕訳をノートに書いていましたが、途中から「この取引はDebit側に資産、Credit側に収益」と口に出して確認するやり方に変えたところ、演習の速度が上がりました。
学習の進め方と必要な時間の目安は、アビタスの無料説明会(アビタスの無料説明会で最新情報を確認する)で確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1.
DebitとCreditはなぜ「借」「貸」なのですか?
銀行業務における記録方法に由来するとされます。
貸出金は「誰から返済を受けるか」という観点でDebit、預金は「預けてもらった」という観点でCreditに記録されていた、という説明が一般的です。
ただし現代の会計処理では意味を考える必要はありません。左と右の記号と割り切ってください。
Q2.
Dr.とCr.はそれぞれ何の略ですか?
Dr. は Debit Record、Cr. は Credit Record
の略とされています。
Debitの略が「De」ではなく「Dr」である理由がこれです。実務ではDr./Cr.の表記が一般的で、システムの入力画面でもこの表記が使われます。
Q3.
英文仕訳の書き方に決まりはありますか?
縦に書き、Creditの行を右にずらすのが通例です。
Debitを上、Creditを下に置き、金額に$記号は付けません。必要に応じて仕訳の下に括弧書きで摘要(Narration)を添えます。
ただし実務ではシステム入力が中心なので、書式より方向と金額の正確さが重要です。
Q4.
日本の簿記の知識はそのまま使えますか?
方向のルールはそのまま使えます。
「資産の増加は借方」「収益の発生は貸方」という構造は日本の簿記と同一です。
違うのは勘定科目の英語と、一部の会計処理の結論(のれん・棚卸資産など)です。範囲の重なりは「簿記1級とUSCPAの範囲かぶりを検証|論点別マッピング表」で検証しています。
Q5.
AccruedとPrepaidを間違えないコツはありますか?
「先に来たほうで決まる」と覚えてください。
支払いが先なら Prepaid Expense(資産)、費用が先なら Accrued
Expense(負債)。入金が先なら Unearned Revenue(負債)、収益が先なら Accrued
Revenue(資産)です。
「先に現金が動いたか、先に損益が動いたか」で判断すると迷いません。
Q6.
貸借が一致しないときはどう探せばいいですか?
差額を2で割ってみてください。
割った金額の仕訳が見つかれば、その仕訳の方向(Dr./Cr.)が逆である可能性が高いです。
差額が9で割り切れる場合は、桁の入れ替え(たとえば12を21と入力)の可能性があります。
Q7. 評価勘定(Contra
account)とは何ですか?
特定の勘定から控除するための勘定です。
減価償却累計額(Accumulated
Depreciation)は有形固定資産から、貸倒引当金(Allowance for Doubtful
Accounts)は売掛金から控除します。
資産を直接減らさずに控除額を別立てで示すことで、取得原価と控除額の両方が財務諸表で分かるという利点があります。
まとめ:意味を考えず、左右と6つの対応だけ覚える
この記事の要点を再掲します。
- DebitとCreditに「借りる・貸す」の意味はない。左と右の記号。Dr.はDebit
Record、Cr.はCredit Recordの略 - 覚えるのは1つだけ。Debitで増えるのは資産・費用・配当、Creditで増えるのは負債・純資産・収益。会計等式から導ける
- 英文仕訳は縦に書き、Creditの行を右にずらす。$記号は付けず、必要なら摘要(Narration)を添える
- 減価償却・貸倒引当金は評価勘定(Contra
account)を使い、資産を直接減らさない - 最も多い間違いはAccruedとPrepaidの取り違え。「先に来たほうで決まる」で判断する
- 貸借が合わないときは差額を2で割る(方向の逆)、9で割り切れるか確認する(桁の入れ替え)
- USCPAでは仕訳を書かせるより、取引から期末残高や財務諸表への影響を問う形式が中心
英文仕訳は、日本の簿記の知識がそのまま使える領域です。
まずは本記事の20例を、日本語の仕訳と対比しながら1度書き写してみてください。方向のルールが同じだと確認できれば、あとは勘定科目の英語を覚えるだけになります。
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