この記事でわかること
- 英文会計とは何か。「日本の簿記を英語に訳したもの」ではない理由と、米国会計制度に基づく体系であること
- 最初に押さえるべき5つの土台(会計等式・5要素・Debit/Credit・財務三表・会計期間)
- 日本の簿記経験者がつまずく3つの違い(流動性配列・借方貸方の感覚・用語の一対一対応がない)
- 10日間(1日30分)で英文財務諸表を読めるようになる学習ロードマップ
- USCPAを始める前にどこまでやるべきか(やりすぎると時間の無駄になる境界)
- 簿記の知識ゼロでも問題ない理由と、簿記3級を先にやるべきケース
著者情報:しわすゆう|USCPA(米国公認会計士)。大学在学時にアビタスのUSCPA講座を受講しUSCPAを取得。新卒でBIG4監査法人に就職し会計監査を3年経験。現在はコンサル会社に勤務。
最終更新日:2026年8月30日
「英文会計とは何か」「USCPAを始める前に何を準備すればいいか」「簿記の知識がなくても大丈夫か」と考えている方に向けた入門記事です。
結論から言うと、英文会計とは「日本の会計・簿記を英語に置き換えたもの」ではなく、米国の会計制度(US
GAAP)に基づいて英語で会計処理を行う体系です。
日本語で「貸倒引当金」と呼ぶものが英語で何と言うか、という単語の対応の話ではありません。そもそも財務諸表の並び順が違い、処理の結論が違う論点もあります。
そして、USCPAを目指す方に伝えたいのは、英文会計の準備は「10日・1日30分」程度で十分だということです。
USCPAの予備校は会計初学者を想定した教材を用意しており、深く準備しすぎるとUSCPA本体の学習時間を削ることになります。ここでの目標は「英文財務諸表の骨格が読めること」までです。
この記事では、英文会計の全体像と、最短で土台を作る順序を整理します。個別の用語や仕訳の詳細は、当サイトの各記事に譲ります。
英文会計とは?日本の簿記の英訳ではない
英文会計とは、米国の会計制度(US
GAAP)に準じて、英語で会計処理と財務諸表の作成を行うことである。日本の簿記の用語を英語に置き換えたものではなく、財務諸表の表示順序、勘定科目の区分、一部の会計処理の結論そのものが日本基準と異なる。したがって「簿記を知っていれば英単語を覚えるだけ」という理解では、実務でも試験でもつまずく。
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 日本の簿記を英語にしたもの | 米国の会計制度に基づく別の体系 |
| 単語を覚えれば読める | 表示の順序と区分が違うため、構造の理解が必要 |
| 処理はどこも同じ | のれん・減損・棚卸資産などで結論が異なる |
| 英会話力が必要 | 必要なのは読む力と用語。会話力は別の話 |
特に4つ目は誤解が多い部分です。
英文会計で求められるのは、英文の財務諸表と会計基準を読む力であり、英会話力ではありません。TOEICのリーディングに近い能力です。
英語力の要否は「USCPAの英語力|TOEIC何点から?600点台でも受かる理由」で扱っています。
最初に押さえる5つの土台
英文会計の入口で押さえるべきは、①会計等式(Assets =
Liabilities + Equity)②5つの要素(資産・負債・純資産・収益・費用)③Debit と
Credit の意味 ④財務三表の関係
⑤会計期間と決算の流れ、の5つである。この5つが頭に入れば、英文財務諸表の骨格は読める。
| 土台 | 内容 | 覚え方 |
|---|---|---|
| ①会計等式 | Assets = Liabilities + Equity(資産=負債+純資産) |
すべての出発点。左右が必ず一致する |
| ②5つの要素 | Assets(資産)/Liabilities(負債)/Equity(純資産)/Revenues(収益)/Expenses(費用) | この5語がすべての勘定科目の親 |
| ③Debit と Credit | Debit=左側、Credit=右側。「増える/減る」ではない | 「借方・貸方」と同じく、方向を表す記号と割り切る |
| ④財務三表の関係 | Balance Sheet(BS)・Income Statement(PL)・Statement of Cash Flows(CF) |
PLの利益がBSの利益剰余金に、CFの残高がBSの現金に繋がる |
| ⑤会計期間と決算 | Fiscal year、Accrual basis(発生主義)、Closing entries | 期中の記録→決算整理→財務諸表という流れ |
最も重要なのは③のDebitとCreditです。
日本語の「借方・貸方」と同様、Debitは「借りる」、Creditは「貸す」という意味では使われていません。単に左と右を指す記号です。
この理解を最初に固めておくと、後の仕訳がすべて機械的に処理できるようになります。
仕訳の考え方は「仕訳の英語|Debit/Creditの考え方と英文仕訳20例」、財務三表の英語表記は「財務諸表(財務三表)の英語表記|英文BS・PL・CFの読み方」で詳しく扱います。
日本の簿記経験者がつまずく3つの違い
簿記の学習経験がある人ほど、英文会計で違和感を持つ場面がある。①貸借対照表の並び順が流動性配列で、日本と上下が逆に見える
②勘定科目が日本語と一対一で対応しない
③一部の会計処理の結論が日本基準と異なる、の3点である。この違いを先に知っておくと、混乱が減る。
| 違い | 日本の簿記 | 英文会計(US GAAP) |
|---|---|---|
| ①BSの並び順 | 流動性配列法(流動→固定) | 同じく流動性配列だが、現金が最上位に来るなど表示の粒度が違う |
| ②勘定科目の対応 | 「貸倒引当金」など日本固有の科目 | Allowance for Doubtful Accounts など。一対一で訳せない科目がある |
| ③処理の結論 | のれんは20年以内で償却 | のれんは償却しない(毎期の減損テスト) |
③は特に注意が必要です。
日本基準で正しい処理が、US
GAAPでは誤りになる論点があります。代表例はのれん(償却しない)、棚卸資産(後入先出法が認められる)、減損の判定枠組みです。
簿記1級とUSCPAの範囲の重なりは「簿記1級とUSCPAの範囲かぶりを検証|論点別マッピング表」で論点ごとに検証しています。
用語は「訳す」のではなく「そのまま覚える」
英文会計で最も効率が悪いのは、英語→日本語→理解という二段階の処理です。
| 非効率な覚え方 | 効率的な覚え方 |
|---|---|
| Accounts Receivable →「売掛金」→ 意味を思い出す | Accounts Receivable = 「まだ回収していない売上代金」と直接理解する |
| Retained Earnings →「利益剰余金」→ 意味を思い出す | Retained Earnings = 「これまでの利益の蓄積」と直接理解する |
英語のまま意味に直結させるほうが、試験でも実務でも速くなります。
会計英単語は「会計英単語100選|BS・PL・仕訳の英語を優先度順に整理」でまとめます。
10日間ロードマップ|1日30分で骨格を作る
英文会計の入門は、1日30分・10日間で「英文財務諸表の骨格が読める」水準まで到達できる。順序は、会計等式→5要素→勘定科目→仕訳→BS→PL→CF→つながり→実物を読む→復習である。ここまでで十分で、これ以上の深掘りはUSCPAの学習の中で行うほうが効率的である。
| 日 | 学ぶこと | 到達点 |
|---|---|---|
| 1日目 | 会計等式(Assets = Liabilities + Equity) | 左右が一致する意味が分かる |
| 2日目 | 5つの要素と、それぞれの代表的な勘定科目 | 科目がどの要素に属するか分かる |
| 3日目 | Debit と Credit(左と右) | 増減の方向を要素別に言える |
| 4日目 | 基本の仕訳10パターン(売上・仕入・給与・減価償却など) | 単純な取引を仕訳できる |
| 5日目 | Balance Sheet の構造 | 流動・固定の区分が読める |
| 6日目 | Income Statement の構造 | 売上総利益・営業利益・純利益の並びが分かる |
| 7日目 | Statement of Cash Flows の構造 | 営業・投資・財務の3区分が分かる |
| 8日目 | 三表のつながり | 利益がBSに、現金残高がCFに繋がる流れを説明できる |
| 9日目 | 実物の英文財務諸表を読む | 米国上場企業の10-K等を眺め、項目を拾える |
| 10日目 | 復習と用語の再確認 | 覚えていない用語を洗い出す |
9日目の「実物を読む」が最も効果的です。
米国企業の年次報告書(Form 10-K)は各社のIR(Investor
Relations)ページで公開されており、Balance Sheet と Income
Statement
のページだけを眺めるだけでも、学んだ構造が実物として確認できます。
USCPAの学習に進む場合、予備校の教材はこの10日分の内容を最初のセクションで扱うため、先取りしても損はしませんが、必須でもありません。
自分に事前準備が必要かどうかは、アビタスの無料説明会(アビタスの無料説明会で最新情報を確認する)で教材のサンプルを見て判断するのが早いです。
USCPAの前にどこまでやるべきか
USCPAを目指す場合、英文会計の事前準備は「10日ロードマップの範囲」で十分である。予備校の教材は会計初学者を前提に作られており、英文会計入門に相当する内容が講座に含まれている。事前に深く学びすぎると、同じ内容を二度学ぶことになり、時間の効率が落ちる。
| 準備の範囲 | 必要性 | 理由 |
|---|---|---|
| 会計等式・5要素・Debit/Credit | やる価値が高い | 最初の講義の理解速度が変わる |
| 基本の仕訳・財務三表の構造 | やる価値が高い | 全体像があると迷子にならない |
| 実物の財務諸表を眺める | やる価値が高い | 学習の目的が具体化する |
| 個別論点(リース・年金・税効果) | 不要 | USCPAの講座で扱う |
| 簿記3級・2級の取得 | 状況による(後述) | 目的が「USCPAだけ」なら必須ではない |
| 会計英単語の暗記(数百語) | 不要 | 学習の中で自然に覚える |
「準備をしすぎて本体に入れない」のが最もよくないパターンです。
USCPAの受験には出願州ごとの単位要件があり、その確認と単位取得のほうが時間を要します。準備より先に、自分が出願できる州と不足単位を確認するほうが計画は前に進みます。
簿記3級を先にやるべきケース
| 状況 | 簿記3級を先にやるべきか |
|---|---|
| USCPAが目的で、時間を最短にしたい | 不要。予備校の教材で足りる |
| 会計の適性を確かめたい | やる価値あり。80〜150時間で判断できる |
| 日本の経理職も視野にある | やる価値あり。簿記2級まで進む前提で |
| 単位取得の待ち時間がある | 時間の有効活用として有効 |
簿記との関係は「簿記2級・1級保有者のUSCPA勉強時間|短縮効果を科目別に解説」で扱っています。
筆者の場合|最初の壁は英語ではなく構造だった
筆者が英文会計を学び始めたときにつまずいたのは、英単語ではなく「Debit
と Credit
がなぜその向きなのか」という構造の理解でした。ここを「意味を考えず、要素ごとに向きを機械的に覚える」と割り切った時点で、学習が一気に進みました。
最初の1週間で起きたことを整理します。
| つまずき | 何が起きたか | 解決した方法 |
|---|---|---|
| Debit/Creditの向き | 「借りる・貸す」の意味で考えて混乱 | 左と右の記号と割り切り、要素別に暗記 |
| 勘定科目の英語 | 日本語に訳してから理解しようとして遅い | 英語のまま意味に直結させる |
| BSの読み方 | どこを見ればよいか分からない | 現金・売掛金・利益剰余金の3つだけを先に探す |
| PLの読み方 | 項目が多くて追えない | 売上・営業利益・純利益の3つだけを先に探す |
最初は「3つだけ探す」で十分です。
実物の財務諸表は項目が多く、全部を理解しようとすると止まります。探す項目を絞ると読めるようになり、読めると面白くなります。
監査法人に入ってからも、英文の報告パッケージを最初に見るときは同じで、全体を読まず、注目する数字を決めてから読むという順番でした。
英文会計を実務でどう使うかは「外資系経理のキャリアとUSCPA|職階別の仕事・年収・昇進の道」でも扱っています。
よくある質問(FAQ)
Q1.
簿記の知識がなくても英文会計は学べますか?
学べます。
USCPAの予備校は会計初学者を想定した教材を用意しており、簿記の学習経験がない受講生が半数程度というデータもあります。
英文会計入門に相当する内容は講座に含まれているため、簿記の資格がなくてもUSCPAに合格している人は多数います。
Q2.
英文会計に英会話力は必要ですか?
必要ありません。
英文会計で求められるのは英文の財務諸表と会計基準を読む力で、話す力は別のスキルです。
ただし、実務で海外拠点や本社とやり取りする段階になると話す力が必要になります。その段階での対策は「会計英語のオンライン英会話比較|8社の違いと繁忙期の続け方」で扱っています。
Q3.
英文会計と日本の簿記は何が違いますか?
用語ではなく体系が違います。
英文会計は米国の会計制度(US
GAAP)に基づく処理で、財務諸表の表示や区分、一部の会計処理の結論が日本基準と異なります。
代表例は、のれん(日本基準は償却、US
GAAPは非償却+減損テスト)、棚卸資産(US
GAAPは後入先出法が認められる)です。
Q4.
どのくらいの時間で英文財務諸表が読めるようになりますか?
骨格を読むだけなら10日・合計5時間程度で到達できます。
会計等式→5要素→Debit/Credit→仕訳→財務三表という順で進め、最後に実物の財務諸表を眺めると、学んだ構造が確認できます。
ただし「読める」と「分析できる」は別なので、深い読解はUSCPAやIFRSの学習の中で積み上げてください。
Q5.
USCPAを始める前に英文会計をどこまで勉強すべきですか?
会計等式・5要素・Debit/Credit・財務三表の構造までで十分です。
個別論点(リース・年金・税効果)や会計英単語の大量暗記は、USCPAの講座で扱うため事前学習は不要です。
準備より先に、出願できる州と不足単位の確認を進めるほうが、計画は早く前に進みます。
Q6.
会計英単語はいくつ覚えればいいですか?
入門段階では50〜100語程度で十分です。
Assets、Liabilities、Equity、Revenues、Expenses
の5語を軸に、そこにぶら下がる代表的な勘定科目を覚えれば、財務諸表の骨格は読めます。
詳細は「会計英単語100選|BS・PL・仕訳の英語を優先度順に整理」でまとめます。
Q7.
英文会計の知識だけで転職に有利になりますか?
単体では弱いです。
英文会計は知識であり、求人票に「英文会計の知識」と書かれることはあっても、応募条件になるのは資格(USCPA・簿記)と実務経験です。
英文会計は、それらを学ぶための土台と位置づけてください。
経理の資格の優先順位は「経理の転職に有利な資格ランキング|キャリア段階別の3つの順位」で整理しています。
まとめ:骨格は10日で作れる。深掘りは本体で
この記事の要点を再掲します。
- 英文会計は日本の簿記の英訳ではなく、米国の会計制度に基づく体系。表示の順序も、一部の処理の結論も異なる
- 最初に押さえる土台は5つ。会計等式・5要素・Debit/Credit・財務三表・会計期間
- 簿記経験者がつまずくのは表示の粒度・科目の対応・処理の結論の3点。のれん・棚卸資産・減損は要注意
- 1日30分・10日間で英文財務諸表の骨格は読める。9日目に実物の10-Kを眺めるのが最も効果的
- USCPAを目指すなら、事前準備はこの10日分で十分。個別論点と単語の大量暗記は不要
- 簿記3級は必須ではない。適性を確かめたい人・日本の経理も視野にある人は取る価値がある
- 筆者の最初の壁は英単語ではなくDebit/Creditの構造。「左と右の記号」と割り切ると一気に進んだ
英文会計は、英語の勉強ではなく会計の勉強です。
まずは今日、Assets = Liabilities + Equity
の意味を自分の言葉で説明できるかを確かめるところから始めてみてください。そこが出発点で、10日後には英文の財務諸表を開けるようになっています。
なお、USCPAまで進むかを迷っている段階なら、アビタスの無料説明会(アビタスの無料説明会で最新情報を確認する)で必要な学習量と単位要件を確認し、英文会計の学習と並行して計画を立てるとスムーズです。
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