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監査の英語表現|BIG4の現場で実際に使う用語と型

この記事でわかること

  • 監査の英語(audit / auditing /
    assurance)の使い分けと、教科書の用語ではなく現場で実際に飛び交う語の全体像
  • 監査の年間の流れ(計画→PBCリスト→往査→確認状→発見事項→クリアランス→報告)の場面別に使う英語表現
  • tie
    out・foot・vouch・trace・tickmarkなど、日本語記事では扱われにくい調書作成の現場語と、vouchとtraceの方向の違い
  • グループ監査で親会社の監査人とやり取りするときの英語(group
    instructions、reporting package、clearance)
  • 米国基準と国際基準で用語が違う点(unqualified/unmodified、CAM/KAM)と、筆者がBIG4の外資系クライアントで実際に使った・間違えた表現

著者情報:しわすゆう|USCPA(米国公認会計士)。大学在学時にアビタスのUSCPA講座を受講しUSCPAを取得。新卒でBIG4監査法人に就職し会計監査を3年経験。現在はコンサル会社に勤務。

最終更新日:2026年8月30日

「監査の英語は何を覚えればいいのか」「英語の監査調書やメールで使う表現が分からない」「海外の監査人からの依頼文が読めない」という方に向けて、監査の現場で実際に使う英語表現を整理した記事です。

結論から言うと、監査の英語で本当に必要なのは、Audit
EvidenceやMaterialityといった教科書の用語ではなく、PBC list・tie
out・vouch・trace・tickmark・rollforward・clearanceといった現場語です。教科書の用語は日本語で理解済みのものが多く、英語を当てるだけで済みます。一方、現場語は日本語の対応語がないか、あっても意味がずれるため、場面ごとに覚える必要があります。

監査用語の英単語リストは複数のサイトで公開されていますが、そのリストを覚えても、海外の監査人から来るメールは読めるようになりません。

理由は、実務で使われるのが用語ではなく「依頼と回答の型」だからです。

筆者はBIG4監査法人で3年間、外資系企業を中心に会計監査を担当しました。海外の親会社の監査人(group
auditor)から英語で指示書が届き、英語で調書を作り、英語で回答する環境でした。

この記事では、その3年間で実際に使った表現を、監査の年間の流れに沿って整理します。あわせて、AICPA・PCAOBの基準と国際監査基準(ISA)で用語が違う点も解説します。

英文会計の基礎は「英文会計入門|USCPAの前に押さえる5つの土台と学習順序」、財務諸表の科目名は「財務諸表(財務三表)の英語表記|英文BS・PL・CFの読み方」で扱っているので、本記事は「監査の現場」に絞ります。

監査は英語で何と言う?audit・auditing・assuranceの違い

監査はaudit。名詞にも動詞にもなり、「監査を実施する」はconduct
/ perform an auditまたはaudit
〜と言う。行為・学問領域としての監査はauditing(監査論)。auditを含むより広い保証業務はassurance(保証業務)で、BIG4の監査部門はAudit
&
Assuranceという名称を使うことが多い。監査人はauditor、監査法人はaudit
firm(米国ではCPA firm、日本の法人形態としてはaudit
corporation)。

まず、名称まわりを整理します。

日本語 英語 補足
監査 Audit 名詞・動詞の両方
監査(行為・学問) Auditing Auditing standards(監査基準)
保証業務 Assurance (services) 監査を含む上位概念
レビュー Review 保証水準が監査より低い
合意された手続 Agreed-upon procedures (AUP) 意見表明を伴わない
監査人 Auditor
主査 In-charge / Senior (auditor) 日本の「主査」に相当
現場責任者 Engagement manager
業務執行社員 Engagement partner 署名する立場
監査法人 Audit firm / CPA firm
監査チーム Engagement team / Audit team
監査契約 Engagement 「案件」の意味でも使う
監査契約書 Engagement letter
内部監査 Internal audit
外部監査 External audit
監査役 Corporate auditor / Statutory auditor 米国にはない機関のため説明が要る

engagementという語が「監査契約」と「案件」の両方で使われる点は、最初に押さえておくと会話が楽になります。

“Which engagement are you
on?”は「今どの案件に入っていますか」という日常的な質問です。

英文会計を体系的に学ぶ順番は「英文会計入門|USCPAの前に押さえる5つの土台と学習順序」で解説しています。教材の比較は「USCPA予備校おすすめ比較|費用・教材・サポートで選ぶ3校」に整理しました。アビタスの無料説明会(アビタスの無料説明会で最新情報を確認する)では、AUDのテキストのサンプルも確認できます。

監査の流れに沿って使う英語は?場面別の表現

監査の英語は、用語集ではなく年間の流れで覚えるほうが定着する。①計画(planning、kickoff
meeting、risk assessment)②依頼リスト(PBC list、request
list)③往査(fieldwork、walkthrough、inquiry、observation)④確認状(confirmation、positive
/ negative)⑤発見事項(exception、misstatement、passed
adjustment)⑥クリアランス(clearance meeting、sign-off)⑦報告(audit
report、management
letter)の7場面に分けると、必要な語がそれぞれ10語程度で足りる。

①計画(Planning)

日本語 英語 補足
監査計画 Audit plan / Audit strategy
キックオフ会議 Kickoff meeting / Planning meeting
リスク評価 Risk assessment
重要な虚偽表示リスク Risk of material misstatement (RMM)
固有リスク・統制リスク Inherent risk / Control risk
重要性の基準値 Materiality / Performance materiality
明らかに僅少な金額 Clearly trivial threshold
監査範囲 Scope 動詞でscope in / scope out
スケジュール Timeline / Milestones
期中監査 Interim audit / Interim procedures
期末監査 Year-end audit / Final audit

scopeは動詞としても使い、“We scoped out the subsidiary this
year.”(今期はその子会社を監査範囲から外した)のように言います。

②依頼リスト(PBC list)

PBC listは”Prepared By
Client”の略で、クライアントに用意してもらう資料の一覧です。

日本語では「資料依頼リスト」と呼びますが、英語では圧倒的にPBCが使われ、社内でも”Send
the PBC to the client.”のように動詞的に扱われます。

日本語 英語 例文・補足
資料依頼リスト PBC list / Request list Prepared By Clientの略
提出期限 Due date / Deadline
未提出項目 Outstanding items / Open items
督促する Follow up on 〜 I’ll follow up on the open items.
提出済み Received / Provided
増減表 Rollforward (schedule) 期首・増減・期末を並べた表
内訳・明細 Breakdown / Detail listing
総勘定元帳 General ledger (GL)
試算表 Trial balance (TB)
補助元帳 Subledger
年齢表 Aging (schedule) 売上債権の滞留分析

③往査・監査手続(Fieldwork)

日本語 英語 補足
往査・現場作業 Fieldwork
ウォークスルー Walkthrough 業務の流れを1件追う
質問 Inquiry
観察 Observation
閲覧 Inspection
実査 Physical inspection / Physical count 棚卸の立会はobservation of physical inventory count
再実施 Reperformance
分析的手続 Analytical procedures
実証手続 Substantive procedures
詳細テスト Test of details (TOD)
運用評価手続 Test of controls (TOC)
サンプリング Sampling
母集団 Population
抽出項目 Selection / Sample items
監査調書 Workpapers / Working papers WPと略す
監査証拠 Audit evidence

④確認状(Confirmation)

日本語 英語 補足
確認状 Confirmation
積極的確認 Positive confirmation 回答を必ず求める
消極的確認 Negative confirmation 相違がある場合のみ回答
発送 Send out / Mail out
回収 Receive / Return
回収率 Response rate
未回収 Non-response
代替手続 Alternative procedures 未回収時に実施
差異 Discrepancy / Difference
調整 Reconciliation

⑤発見事項(Findings)

日本語 英語 補足
例外事項 Exception サンプルで見つかった逸脱
虚偽表示 Misstatement
修正すべき虚偽表示 Corrected misstatement
未修正の虚偽表示 Uncorrected misstatement / Passed adjustment 一覧はSUM(Summary of Uncorrected Misstatements)
修正仕訳案 Proposed adjusting journal entry (PAJE)
内部統制の不備 Control deficiency
重要な不備 Significant deficiency
開示すべき重要な不備 Material weakness
経営者確認書 Management representation letter (rep letter)
追加手続 Additional procedures

passed
adjustment(未修正の虚偽表示)は日常会話でよく使われ、“We passed on
it.”で「修正させずに見送った」という意味になります。

⑥クリアランスと⑦報告

日本語 英語 補足
審査 Engagement quality review (EQR)
承認・署名 Sign-off 調書の承認も含む
クリアランス会議 Clearance meeting 親会社監査人への報告
監査報告書 Audit report / Auditor’s report
無限定適正意見 Unqualified opinion(米国)/ Unmodified opinion(ISA・日本) 後述
限定意見 Qualified opinion
不適正意見 Adverse opinion
意見不表明 Disclaimer of opinion
継続企業の前提 Going concern
強調事項 Emphasis of matter
その他の記載内容 Other information
マネジメントレター Management letter 改善提案

監査調書でしか使わない現場語は?tie
out・vouch・trace

日本語の記事で扱われにくいのが、調書作成の動詞群である。tie
out(突合する)、foot /
cross-foot(縦計・横計を検算する)、vouch(帳簿から証憑へ遡る)、trace(証憑から帳簿へ追う)、tickmark(監査手続を示す記号)、scope(範囲に入れる/外す)。特にvouchとtraceは検証する方向が逆で、証明したいアサーションが異なるため、混同すると調書の意味が変わる。

頻出の動詞

英語 日本語 使い方
Tie out 突合する・一致を確認する I tied out the TB to the financial statements.
Agree to 〜 〜と一致することを確認する Agreed the balance to the GL.
Foot 縦計を検算する Footed the schedule without exception.
Cross-foot 横計を検算する
Recalculate 再計算する
Vouch 帳簿から証憑へ遡る Vouched the sales entries to invoices.
Trace 証憑から帳簿へ追う Traced the shipping documents to the sales ledger.
Scan 通査する Scanned the GL for unusual entries.
Reconcile 調整する・突合する Reconciled the subledger to the GL.
Roll forward 前期調書を当期に更新する Rolled forward last year’s workpapers.
Sign off 承認する The manager signed off on the workpaper.
Clear 指摘を解消する I cleared all the review notes.

vouchとtraceの違いは、USCPAのAUDでも頻出の論点です。

手続 方向 検証するアサーション 例
Vouch 帳簿 → 証憑 Occurrence(発生)・Existence(実在性) 計上された売上に請求書があるか
Trace 証憑 → 帳簿 Completeness(網羅性) 出荷記録が売上に計上されているか

「計上されているものが本物か」がvouch、「あるべきものが計上されているか」がtraceです。

日本語ではどちらも「突合」と言ってしまうため、英語のほうが方向が明確になります。

tickmark(ティックマーク)

tickmarkは、調書上で「この数字にどの手続を実施したか」を示す記号です。

数字の横に小さな記号を付け、調書の下部に凡例(legend)を置きます。

記号の例 意味の例 英語の凡例
✓ 総勘定元帳と突合 Agreed to general ledger.
F 縦計を検算 Footed without exception.
V 証憑と突合(発生) Vouched to supporting invoice.
T 帳簿へ追跡(網羅性) Traced to sales journal.
R 再計算 Recalculated by auditor.

記号自体は法人ごとに決まっているため、凡例の英文を定型で書けるようにしておくと調書作成が速くなります。

グループ監査の英語は?親会社の監査人とのやり取り

日本の子会社が外資系グループに属している場合、親会社の監査人(group
auditor)から英語の指示書が届く。頻出は、group
auditor(グループ監査人)、component auditor(構成単位の監査人)、group
audit instructions(監査指示書)、reporting
package(報告パッケージ)、component
materiality(構成単位の重要性の基準値)、clearance(報告完了)、deliverables(提出物)。日本側は「component
auditor」の立場になるため、この語彙は必須である。

立場と文書の名称

日本語 英語 補足
グループ監査人 Group auditor / Group engagement team 親会社側
構成単位の監査人 Component auditor 子会社側=日本のチーム
構成単位 Component 子会社・事業部など
重要な構成単位 Significant component
監査指示書 Group audit instructions 毎年送られてくる
報告パッケージ Reporting package 記入して返送する
構成単位の重要性の基準値 Component materiality グループ全体より低く設定される
報告閾値 Reporting threshold これを超える虚偽表示は報告
提出物 Deliverables
提出期限 Reporting deadline
クリアランス Clearance 報告完了の連絡
電話会議 Conference call / Touchpoint call

component
materialityがグループ全体の重要性より低く設定される点は、指示書を読むときに最初に確認すべき数字です。

日本基準の監査で使っている重要性の基準値と違うため、同じ会社でも報告すべき虚偽表示の水準が変わります。

なお、グループ監査の基準(ISA
600、日本の監査基準委員会報告書600)は近年改訂されており、構成単位の考え方が「事業単位ベース」に整理されています。適用時期と具体的な要求事項は、最新版の基準でご確認ください。

指示書・メールでよく出る表現

場面 英語の型
依頼 Please complete the attached reporting package by October 15.
確認 Could you confirm whether the component materiality has been
applied?
報告 We identified one uncorrected misstatement above the reporting
threshold.
該当なし No matters to report. / Nothing came to our attention.
遅延の連絡 We expect a two-day delay due to a pending confirmation.
完了 We have completed our procedures and cleared all review notes.

“No matters to
report.”は、報告事項がない場合の定型句です。

日本語の「特記事項なし」に相当し、報告パッケージの多くの欄がこの一文で埋まります。

監査法人で英語をどの程度使うかは「監査法人で英語は使う?USCPAが3年で担当した英語業務の実態」で詳しく書いています。

米国基準と国際基準で用語が違う点は?unqualifiedとCAM

同じ内容でも、米国基準(AICPA・PCAOB)と国際基準(ISA)・日本基準で英語が違う場合がある。代表が、無限定適正意見をunqualified
opinion(米国)と呼ぶか、unmodified
opinion(ISA・日本)と呼ぶかの違い。監査上の主要な検討事項も、PCAOB基準ではCritical
Audit Matters(CAM)、ISA・日本基準ではKey Audit
Matters(KAM)である。教科書で覚えた語がそのまま通じないことがあるため、相手がどの基準で話しているかを意識する必要がある。

主な対応を整理します。

内容 米国(AICPA・PCAOB) 国際(ISA)・日本
無限定適正意見 Unqualified opinion Unmodified opinion
除外事項付意見の総称 (Modified opinionも使う) Modified opinion
監査上の主要な検討事項 Critical Audit Matters (CAM)(PCAOB) Key Audit Matters (KAM)
監査基準 GAAS / PCAOB Auditing Standards ISAs / 監査基準委員会報告書
内部統制監査 ICFR audit(SOX 404(b)) 内部統制監査(J-SOX)
財務諸表の作成責任 Management’s responsibility 同左
監査人の独立性 Independence(AICPA Code、SEC規則) IESBA Code

unqualifiedとunmodifiedは、どちらも「無限定」を意味しますが、由来が違います。

unqualifiedは「限定(qualification)が付いていない」、unmodifiedは「修正(modification)されていない」という発想です。

USCPAの試験(AUD)はAICPA・PCAOB基準で出題されるためunqualifiedを使いますが、日本の監査法人で国際基準ベースの案件に入るとunmodifiedが標準になります。

USGAAPとIFRSの会計基準側の差異は「USGAAPとIFRSの違い|10の論点と2027年に広がる差」で整理しています。

筆者がBIG4の現場で使った・間違えた表現は?

筆者はBIG4監査法人で3年間、外資系企業を中心に担当した。英語で苦労したのは用語ではなく、①PBCという略語を知らずに「資料依頼リスト」を直訳した、②レビューノートへの回答で”Done.”とだけ書いて差し戻された、③”No
exceptions
noted.”という定型句を知らず毎回長文で書いていた、の3つだった。いずれも1度覚えれば済むもので、知っているかどうかの差でしかない。

ここからは筆者の実体験です。

①PBCを知らずに直訳した

入所1年目、海外の監査人に資料依頼リストを送る際、“Document Request
List”という件名でメールを出しました。

内容は通じましたが、先輩から「PBCと書けば一発で伝わる」と教わりました。

場面 筆者が使った英語 現場の標準
資料依頼リスト Document request list PBC list
未提出の資料 Documents not yet received Open items / Outstanding items
増減表 Table of changes Rollforward schedule
滞留分析表 Analysis by period Aging schedule
修正案 Correction proposal PAJE (proposed adjusting journal entry)

監査の英語は「正しい英語」より「その業界の言い方」が優先されます。

辞書を引いて正しく訳しても、相手が一瞬考える表現になってしまうと、やり取りの回数が増えます。

②レビューノートへの回答が短すぎた

主査から調書にレビューノート(review
notes、指摘コメント)が付き、それに回答する作業があります。

筆者は最初、“Done.”とだけ書いて返していました。

主査からは「何をしたのか、どの調書のどこを見れば分かるのかを書いてほしい」と差し戻されました。

回答の質 例 評価
不十分 Done. 何をしたか不明
不十分 Updated. 同上
十分 Updated WP 3-2 to include the reconciliation. See tickmark (R). 何を・どこで、が分かる
十分 Agreed the balance to the GL. No exceptions noted. See WP 5-1. 手続と結論が分かる

レビューノートへの回答は「何をしたか+どこを見ればよいか+結論」の3点セットで書くのが基本形です。

これは日本語の調書でも同じですが、英語だと言葉数を減らしたくなるため、意識して型を持つ必要がありました。

③”No exceptions
noted.”を知らなかった

監査手続の結論として最も使うのが“No exceptions
noted.”
(例外事項は発見されなかった)という定型句です。

筆者は最初、“I checked all the samples and there was no
problem.”のような文を毎回書いていました。

通じますが、調書の結論としては冗長で、レビューする側も読みにくくなります。

用途 定型句
手続の結論(問題なし) No exceptions noted.
差異なし No differences noted.
報告事項なし No matters to report.
注意を要する事項なし Nothing came to our attention.
手続完了 Procedures completed.
重要性の観点から追加手続不要 Not significant; no further procedures performed.

この6つの定型句を覚えるだけで、調書の結論欄はほぼ書けます。

監査で扱う財務諸表の科目名は「財務諸表(財務三表)の英語表記|英文BS・PL・CFの読み方」、引当金まわりの語は「のれん・引当金の英語表現|Provisionとの使い分け」で整理しています。

監査の英語をどう身につける?現場に入る前の3ステップ

効率的なのは、①監査報告書の英文を1本、通しで読む、②USCPAのAUDの教材で監査手続を英語のまま学ぶ、③実物のPBCリストと調書の定型句を写して型を持つ、の3ステップ。①は無料で、SEC
EDGARの10-Kに含まれるReport of Independent Registered Public Accounting
Firmを読めばよい。②は日本語で理解済みの内容を英語で確認する作業なので、負担は小さい。

進め方を整理します。

ステップ やること 所要時間の目安 得られるもの
①監査報告書を読む 10-Kの独立監査人の報告書を1本、辞書を引かずに読む 1時間 意見の型、CAMの書き方
②AUDを英語で学ぶ 監査手続・アサーション・意見の種類を英語で確認する 20〜30時間 用語と考え方の接続
③定型句を写す 本記事の結論欄の定型句・tickmarkの凡例を書き写す 30分 調書がすぐ書ける

①で読むべきなのは、意見の段落(Opinion)とCAMの段落です。

CAMの段落は「なぜそれが重要な検討事項なのか」「どう対応したか」を平易な英語で書くため、監査の説明の型がそのまま学べます。

監査を英語で本格的に学ぶなら、USCPAのAUD(監査及び証明業務)が最も体系的な教材になります。日本語の解説と英語の原文がセットになっている予備校教材を使うと、日本の監査実務との対応がつけやすくなります。

各校の教材の作り込みは「USCPA予備校おすすめ比較|費用・教材・サポートで選ぶ3校」で比較しました。実物を確認したい場合は、アビタスの無料説明会(アビタスの無料説明会で最新情報を確認する)でAUDのテキストのサンプルを見ることができます。必要な英語力の目安は「USCPAの英語力|TOEIC何点から?600点台でも受かる理由」を参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. PBCとは何の略ですか?

Prepared By
Client(クライアントが作成するもの)の略で、監査人がクライアントに提出を依頼する資料の一覧を指します。日本語では「資料依頼リスト」「提出依頼資料一覧」と呼ばれますが、英語圏の監査現場では”PBC
list”あるいは単に”PBC”で通じます。“Have you sent the
PBC?”(依頼リストは送りましたか)、“There are still five items open on the
PBC.”(依頼リストに未提出が5件あります)のように使います。監査を受ける企業の経理担当者も知っておくと、監査人とのやり取りが速くなる語です。

Q2. vouchとtraceはどう使い分けますか?

検証する方向が逆です。vouchは帳簿の記録から証憑へ遡る手続で、「計上されているものが実在するか」を確かめます。検証されるアサーションはOccurrence(発生)やExistence(実在性)です。traceは証憑から帳簿へ追う手続で、「あるべきものが計上されているか」を確かめ、Completeness(網羅性)を検証します。売上の過大計上を疑うならvouch、売上の計上漏れを疑うならtraceです。USCPAのAUDでも頻出で、選択肢がこの2語で分かれる問題が出ます。日本語ではどちらも「突合」と言うため、方向を意識して覚えてください。

Q3.
無限定適正意見はunqualifiedとunmodifiedのどちらですか?

基準によって違います。米国基準(AICPA・PCAOB)ではunqualified
opinion、国際監査基準(ISA)および日本の監査基準ではunmodified
opinionを使います。USCPAの試験はAICPA・PCAOB基準で出題されるためunqualifiedが正解になりますが、日本の監査法人で国際基準ベースの案件に入るとunmodifiedが標準です。限定意見(qualified
opinion)、不適正意見(adverse opinion)、意見不表明(disclaimer of
opinion)は両者で共通なので、迷うのは無限定意見だけです。

Q4. CAMとKAMは何が違いますか?

指すものはほぼ同じで、名称と適用範囲が異なります。CAM(Critical Audit
Matters)はPCAOB基準に基づき、米国の上場企業の監査報告書に記載されます。KAM(Key
Audit
Matters)はISAおよび日本の監査基準に基づく名称で、日本では「監査上の主要な検討事項」と訳されます。いずれも、当期の監査で特に重要と判断した事項と、それにどう対応したかを監査報告書に記載する制度です。英語で議論するときは、相手がどの基準の話をしているかで語を切り替えてください。

Q5. 監査調書の結論はどう書けばよいですか?

定型句を使います。最も多いのが”No exceptions
noted.”(例外事項は発見されなかった)で、サンプルテストや突合の結論欄はこの一文で足ります。差異がなかった場合は”No
differences noted.”、報告すべき事項がない場合は”No matters to
report.”です。例外が見つかった場合は、“One exception noted: the invoice
date was after the shipping date. See discussion at WP
4-3.”のように、内容と参照先を書きます。長文で説明するより、定型句+参照先のほうがレビューする側にとって読みやすい調書になります。

Q6.
海外の監査人から届く指示書で最初に確認すべき数字は何ですか?

component materiality(構成単位の重要性の基準値)とreporting
threshold(報告閾値)の2つです。component
materialityはグループ全体の重要性より低く設定されるのが通常で、日本基準の監査で使っている基準値とは異なります。reporting
thresholdは、これを超える未修正の虚偽表示をグループ監査人に報告する必要がある金額です。この2つを取り違えると、報告すべき事項を報告しないという重大な問題につながります。あわせて、reporting
deadline(提出期限)とdeliverables(提出物の一覧)も最初に確認してください。

Q7.
監査の英語はUSCPAの学習だけで実務に対応できますか?

用語と考え方は十分に身につきますが、現場語は別に覚える必要があります。USCPAのAUDで学べるのは、アサーション、監査リスク、監査手続の種類、意見の種類といった体系的な知識で、これは実務の土台になります。一方、PBC・tie
out・tickmark・rollforward・review
notesといった語は試験に出ないため、現場で覚えることになります。とはいえ、これらは30語程度で、1〜2ヵ月の実務で自然に身につく範囲です。試験で土台を作っておけば、現場語だけを追加すればよい状態になります。

まとめ

監査の現場で使う英語表現について、要点を整理します。

  • 監査はaudit。engagementは「監査契約」と「案件」の両方を指す
  • PBC listはPrepared By
    Clientの略
    。資料依頼リストの現場での標準語
  • vouchは帳簿→証憑(発生・実在性)、traceは証憑→帳簿(網羅性)。方向が逆
  • tie out・foot・cross-foot・reconcile・scan・sign
    off
    が調書作成の基本動詞
  • 結論欄の定型句は”No exceptions
    noted.”ほか6つ
    を覚えれば足りる
  • グループ監査ではcomponent materialityとreporting
    thresholdを最初に確認する
  • 無限定適正意見は米国がunqualified、ISA・日本がunmodified。監査上の主要な検討事項はCAM(米国)とKAM(ISA・日本)
  • レビューノートへの回答は「何をしたか+参照先+結論」の3点セットで書く

監査の英語は、用語集を暗記しても現場では足りません。

必要なのは、年間の流れのどの場面で何を言うかという型で、その多くは30〜50語と6つの定型句で回ります。

まずは米国企業の10-Kに載っている独立監査人の報告書を1本、辞書を引かずに読んでみてください。意見の段落とCAMの段落を読むだけで、監査の説明の型が手に入ります。

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