この記事でわかること
- リース会計の新基準(企業会計基準第34号)が何を変えるのか、「使用権モデル」の考え方をわかりやすく整理
- 適用時期(2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度から強制適用、2025年4月1日以後開始から早期適用可)と対象企業
- 使用権資産・リース負債の計算方法を、オフィス賃借の数値例で通して確認
- 日本の新基準・IFRS第16号・US GAAP(ASC
842)の3基準比較表と、借手の費用計上パターンが基準で違う理由 - 自己資本比率・ROA・EBITDAへの影響と、筆者が監査法人・コンサルで見たリース契約の洗い出しの実務
著者情報:しわすゆう|USCPA(米国公認会計士)。大学在学時にアビタスのUSCPA講座を受講しUSCPAを取得。新卒でBIG4監査法人に就職し会計監査を3年経験。現在はコンサル会社に勤務。
最終更新日:2026年8月30日
「新リース会計基準で何が変わるのかをわかりやすく知りたい」「使用権資産とリース負債の計算が分からない」「日本基準とUS
GAAPでリースの処理がどう違うのか」という方に向けて、リース会計の考え方を整理した記事です。
結論から言うと、新しいリース会計基準の核は「借りている資産を使う権利(使用権)も資産である」という一点です。この考え方(使用権モデル)により、これまで賃料を毎月費用計上するだけだったオフィスや店舗の賃借契約も、貸借対照表に使用権資産とリース負債として計上されます。日本では2027年4月1日以後に開始する会計年度から強制適用され、3月決算企業なら2028年3月期からです。
リース会計が難しく感じられるのは、計算そのものより「どの契約がリースに該当するか」の判定が広いためです。
コピー機のリース契約だけでなく、本社オフィス、店舗、倉庫、社宅、駐車場、サーバーラックといった賃貸借契約の多くが対象になります。
筆者はBIG4監査法人でIFRS任意適用企業のリースの監査を担当し、現在はコンサル会社で新基準への対応支援に関わっています。実務で最も時間がかかるのは仕訳ではなく、契約の洗い出しです。
この記事では、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(2024年9月公表)、IFRS第16号、FASB
ASC
842を一次情報に、新基準の考え方、計算、3基準の違い、実務の注意点を解説します。
なお、適用時期や少額リースの基準額は制度変更の可能性があるため、実務判断の際は必ずASBJ(企業会計基準委員会)の公表資料で最新情報をご確認ください。
英文会計の全体像は「英文会計入門|USCPAの前に押さえる5つの土台と学習順序」、連結の入門は「連結会計をわかりやすく|仕組みと5つの連結修正仕訳の型」で扱っているので、本記事は「リース」に絞ります。
新リース会計基準は何を変える?使用権モデルをわかりやすく
新リース会計基準の核は「使用権モデル」である。借手は、リース契約によって「原資産を一定期間使用する権利(使用権資産)」を得て、その対価を支払う義務(リース負債)を負うと考える。この考え方では、契約がファイナンス・リースかオペレーティング・リースかを問わず、原則としてすべてのリースが貸借対照表に計上される。従来の日本基準(企業会計基準第13号)ではオペレーティング・リースがオフバランスだったため、この点が最大の変更である。
旧基準と新基準の違い
| 項目 | 旧基準(企業会計基準第13号) | 新基準(企業会計基準第34号) |
|---|---|---|
| 借手の分類 | ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分 | 区分を廃止(単一モデル) |
| オペレーティング・リース | 賃貸借処理(オフバランス) | 使用権資産・リース負債を計上 |
| 不動産の賃貸借 | 原則として費用処理のみ | リースに該当すれば計上 |
| 損益計算書の費用 | 支払リース料(定額) | 使用権資産の償却費+リース負債の利息費用 |
| 貸手の処理 | ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区分 | 区分を維持(概ね従来どおり) |
「賃貸借契約なのに資産計上する」という点が、直感に反して分かりにくい部分です。
しかし、5年間オフィスを借りる契約を結んだ時点で、企業は「5年間そのオフィスを使える権利」と「5年分の賃料を払う義務」を同時に持ちます。
この権利と義務を貸借対照表に載せるというのが、使用権モデルの発想です。
何が変わった背景か
背景は国際的な比較可能性の確保です。
IFRS第16号は2019年1月1日以後に開始する事業年度から、US GAAPのASC
842も公開会社では2019年から適用が始まり、いずれもオンバランス化が進みました。
一方で日本基準だけが旧来の区分処理を維持していたため、IFRS任意適用企業と日本基準採用企業の財務諸表に差が生じていました。
| 基準 | 適用開始 | 借手のオンバランス |
|---|---|---|
| IFRS第16号 | 2019年1月1日以後開始事業年度 | 原則すべて |
| US GAAP(ASC 842) | 公開会社は2019年から | 原則すべて(ただし2分類は維持) |
| 日本(企業会計基準第34号) | 2027年4月1日以後開始事業年度 | 原則すべて |
USCPAの学習では、リースはFAR(財務会計)の頻出論点です。教材の比較は「USCPA予備校おすすめ比較|費用・教材・サポートで選ぶ3校」に整理しました。アビタスの無料説明会(アビタスの無料説明会で最新情報を確認する)では、FARのテキストでリースがどう説明されているかも確認できます。
適用時期と対象企業は?いつから準備が必要か
新リース会計基準は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から強制適用される。3月決算企業なら2028年3月期からで、比較情報の関係で2027年4月からの取引データが必要になる。早期適用は2025年4月1日以後に開始する事業年度から認められている。対象は金融商品取引法の適用を受ける会社と会社法上の大会社等で、中小企業は原則として対象外。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公表 | 2024年9月(ASBJ、企業会計基準第34号および適用指針第33号) |
| 強制適用 | 2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首 |
| 3月決算の場合 | 2028年3月期から |
| 早期適用 | 2025年4月1日以後に開始する事業年度から可能 |
| 対象 | 上場企業、会社法上の大会社など(中小企業は原則対象外) |
| 少額リースの簡便的な取扱い | 一定金額以下の契約は計上を要しない規定あり |
| 短期リース | リース期間12ヵ月以内は計上を要しない選択が可能 |
注意すべきは「強制適用の前年度からデータが必要になる」という点です。
比較情報として前年度の数値を並べるため、実質的には2027年4月開始の年度から新基準ベースの数字を作れる状態にしておく必要があります。
契約の洗い出しに数ヵ月かかる企業が多いため、実務の準備は適用の1〜2年前から始まります。
少額リースの基準額や短期リースの詳細な要件は適用指針で定められており、実務適用にあたっては最新の指針をご確認ください。
使用権資産とリース負債はどう計算する?数値例で確認
計算は2段階。①リース負債=残りのリース料の現在価値、②使用権資産=リース負債+開始日までに支払ったリース料+当初直接費用−受取済みのリース・インセンティブ。割引率は、貸手の計算利子率が分かればそれを使い、分からなければ借手の追加借入利子率を使う。毎期、リース負債は利息法で減らし、使用権資産は原則としてリース期間にわたり定額で償却する。
数値例:オフィスを3年借りる
年額1,200万円を各年度末に支払う、3年間のオフィス賃貸借契約を例にします。割引率は年5%とします。
まず、リース負債(現在価値)を計算します。
| 支払時点 | 支払額 | 現価係数(5%) | 現在価値 |
|---|---|---|---|
| 1年後 | 1,200万円 | 0.9524 | 1,142.9万円 |
| 2年後 | 1,200万円 | 0.9070 | 1,088.4万円 |
| 3年後 | 1,200万円 | 0.8638 | 1,036.6万円 |
| 合計 | 3,600万円 | 約3,268万円 |
開始日の仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 3,268万円 | リース負債 | 3,268万円 |
支払総額3,600万円に対し、計上額は約3,268万円です。差額の約332万円が、3年分の利息に相当します。
リース負債の推移
| 年度 | 期首残高 | 利息(5%) | 支払額 | 期末残高 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 3,268万円 | 163万円 | 1,200万円 | 2,231万円 |
| 2年目 | 2,231万円 | 112万円 | 1,200万円 | 1,143万円 |
| 3年目 | 1,143万円 | 57万円 | 1,200万円 | 0 |
損益計算書に載る費用
使用権資産は3年で定額償却するため、毎年約1,089万円(3,268万円÷3年)の償却費が発生します。
| 年度 | 償却費 | 利息費用 | 合計費用 | 旧基準の賃料 | 差額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 1,089万円 | 163万円 | 1,252万円 | 1,200万円 | +52万円 |
| 2年目 | 1,089万円 | 112万円 | 1,201万円 | 1,200万円 | +1万円 |
| 3年目 | 1,089万円 | 57万円 | 1,146万円 | 1,200万円 | −54万円 |
| 合計 | 3,268万円 | 332万円 | 3,600万円 | 3,600万円 | 0 |
総額は同じですが、費用が前倒しになります(前厚後薄)。
利息費用は残高に対して計算されるため、初期ほど大きくなるためです。
また、償却費と利息費用は営業外・営業内の区分が分かれるため、営業利益とEBITDAは旧基準より改善して見えます。
この点は財務指標の項で詳しく扱います。
日本基準・IFRS・US
GAAPで何が違う?3基準比較
3基準の最大の違いは、借手の費用計上パターンにある。日本の新基準とIFRS第16号は「単一モデル」で、すべてのリースについて償却費+利息費用の2本立てで計上する。一方、US
GAAP(ASC 842)は借手の2分類(finance leaseとoperating
lease)を維持しており、operating
leaseでは総リース料を期間で割った「単一のリース費用」を定額で計上する。オンバランスする点は3基準とも同じだが、損益計算書の見え方が違う。
| 項目 | 日本(企業会計基準第34号) | IFRS第16号 | US GAAP(ASC 842) |
|---|---|---|---|
| 借手の分類 | 単一モデル(分類なし) | 単一モデル(分類なし) | 2分類を維持(Finance / Operating) |
| オンバランス | 原則すべて | 原則すべて | 原則すべて |
| 費用の計上(原則) | 償却費+利息費用 | 償却費+利息費用 | Finance:償却費+利息費用 Operating:単一のリース費用(定額) |
| 費用のパターン | 前厚後薄 | 前厚後薄 | Finance:前厚後薄 Operating:定額 |
| 短期リースの免除 | 12ヵ月以内は計上不要の選択可 | 12ヵ月以内は計上不要の選択可 | 12ヵ月以内は計上不要の選択可 |
| 少額リースの免除 | 一定額以下は計上不要の規定あり | 少額資産の免除あり(目安5,000米ドル程度) | 少額資産の免除規定なし |
| キャッシュフロー計算書 | 元本は財務活動、利息は営業活動等 | 同左 | Finance:元本は財務、利息は営業 Operating:全額が営業活動 |
| 貸手の処理 | 2分類を維持 | 2分類を維持 | 3分類(Sales-type / Direct financing / Operating) |
| 適用時期 | 2027年4月1日以後開始年度 | 2019年1月1日以後開始年度 | 公開会社は2019年から |
出典:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」および適用指針第33号、IFRS
16、FASB ASC 842。
USCPAを学ぶ人にとって最重要なのは、US
GAAPだけが借手の2分類を維持している点です。
IFRSの学習から入ると「新基準では分類がなくなった」と覚えてしまいますが、ASC
842では分類が残っており、5つの分類基準(所有権移転、購入オプション、リース期間が経済的耐用年数の大部分、リース料の現在価値が公正価値のほぼ全部、汎用性のない特別仕様)のいずれかを満たせばfinance
leaseになります。
FARでのリースの解き方は「USCPA FARリース・年金会計の攻略|判定と計算の型」で詳しく扱っています。
英語の用語対応
| 日本語 | 英語 | 補足 |
|---|---|---|
| リース | Lease | |
| 借手 | Lessee | |
| 貸手 | Lessor | |
| 原資産 | Underlying asset | |
| 使用権資産 | Right-of-use asset (ROU asset) | |
| リース負債 | Lease liability | |
| リース期間 | Lease term | 延長・解約オプションを含む判断 |
| 割引率 | Discount rate | |
| 貸手の計算利子率 | Rate implicit in the lease | |
| 借手の追加借入利子率 | Incremental borrowing rate (IBR) | |
| 短期リース | Short-term lease | 12ヵ月以内 |
| 少額資産のリース | Low-value asset lease | IFRS固有の免除 |
| リース・インセンティブ | Lease incentives | フリーレント等 |
| 当初直接費用 | Initial direct costs | 仲介手数料等 |
| ファイナンス・リース | Finance lease | |
| オペレーティング・リース | Operating lease | |
| セール・アンド・リースバック | Sale and leaseback | |
| リースの識別 | Identifying a lease | 「特定された資産の使用を支配する権利」か |
right-of-use asset(ROU
asset、ROU)は実務で最も使われる略語です。
会計英語の全般は「会計英単語100選|BS・PL・仕訳の英語を優先度順に整理」、キャッシュフロー計算書での扱いは「キャッシュフロー計算書の英語|3区分と間接法の表現」で解説しています。
財務指標にどう影響する?自己資本比率・ROA・EBITDA
オンバランス化により、資産と負債が同額増える。その結果、①自己資本比率は低下、②総資産が増えるためROAは低下、③負債が増えるためD/Eレシオは上昇する。一方、支払リース料が償却費と利息費用に置き換わるため、④営業利益は改善、⑤EBITDA(利払前・税引前・償却前利益)は大きく改善する。財務制限条項(コベナンツ)に抵触しないかの事前確認が実務上の重要論点になる。
| 指標 | 影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 低下 | 負債が増え、総資産が増える |
| ROA(総資産利益率) | 低下 | 分母の総資産が増える |
| ROE | ほぼ中立〜わずかに変動 | 純資産は基本的に変わらない |
| D/Eレシオ | 上昇 | 有利子負債として扱われる場合 |
| 営業利益 | 改善 | 利息費用が営業外に出るため |
| EBITDA | 大きく改善 | 償却費と利息費用の両方が除かれる |
| 当期純利益 | 初期は減少、後半は増加 | 費用が前倒しになるため |
| 営業キャッシュフロー | 改善 | 元本部分が財務活動に移る(日本基準・IFRS) |
EBITDAが改善する点は、企業評価やM&Aの場面で注意が必要です。
EBITDA倍率で企業価値を測る場合、新基準の適用前後で数値が変わるため、比較する際は基準を揃える必要があります。
また、借入契約の財務制限条項に「自己資本比率◯%以上」「有利子負債◯倍以下」といった条項がある場合、オンバランス化だけで抵触するおそれがあります。
実務では、適用前に金融機関と条項の取扱いを協議しておくのが定石です。
筆者が実務で見たリース対応の難所は?
筆者はBIG4監査法人でIFRS任意適用企業のリースの監査を担当し、現在はコンサルで新基準への対応支援に関わっている。実務で時間がかかるのは計算ではなく、①リースに該当する契約の洗い出し、②リース期間の判断(延長オプションを含めるか)、③割引率の設定、の3つである。仕訳自体は表計算かシステムで機械的に処理でき、論点にならない。
ここからは筆者の実体験です。
①契約の洗い出しに最も時間がかかる
「うちにリース契約は数件しかない」と考えている企業ほど、洗い出しで想定外の件数が出てきます。
リースに該当するかは、契約の名称ではなく「特定された資産の使用を支配する権利があるか」で判定するためです。
| 契約の種類 | リースに該当するか | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 本社オフィスの賃貸借 | ほぼ該当 | 特定のフロアを排他的に使用 |
| 店舗・倉庫の賃貸借 | ほぼ該当 | 同上 |
| 社宅・寮 | 該当することが多い | 会社が契約主体の場合 |
| 駐車場 | 区画が特定されていれば該当 | 「空いている場所に停める」契約は非該当の可能性 |
| コピー機・複合機 | 該当 | 従来からリース契約 |
| サーバー・データセンター | ラックが特定されていれば該当 | クラウドサービスは通常非該当 |
| 車両リース | 該当 | |
| 業務委託契約に含まれる設備 | 該当する場合がある | 契約書を読み込む必要あり |
筆者が支援した企業では、当初「30件程度」との見込みが、洗い出しの結果200件を超えました。
増えた大半は、各拠点が個別に結んでいた小規模な賃貸借契約と駐車場でした。
契約書が本社に集約されておらず、拠点ごとにファイルされていたことが、把握できていなかった原因です。
②リース期間の判断が金額を大きく動かす
リース期間は「解約不能期間+行使が合理的に確実な延長オプション期間」で判断します。
賃貸借契約で多い「2年契約、自動更新」という形態では、この判断で計上額が大きく変わります。
| 判断 | リース期間 | 使用権資産(年1,200万円・5%の場合) |
|---|---|---|
| 更新を見込まない | 2年 | 約2,232万円 |
| 5年使うと判断 | 5年 | 約5,195万円 |
| 10年使うと判断 | 10年 | 約9,265万円 |
同じ契約でも、期間の判断次第で計上額は4倍以上変わります。
判断の材料は、過去の更新実績、内装等への投資額、移転コスト、事業計画上の拠点戦略などです。
監査でも最も議論になる論点で、判断の根拠を文書化しておくことが求められます。
③割引率の設定
貸手の計算利子率が分かるケースは実務ではまれで、多くは借手の追加借入利子率を使います。
| 論点 | 実務の対応 |
|---|---|
| どの利率を使うか | 同程度の期間・同程度の担保条件で借り入れた場合の利率 |
| 契約ごとに変えるか | 期間帯ごとにグループ化して設定することが多い |
| 海外子会社 | 現地の通貨・信用力に基づく利率を使う |
| 根拠資料 | 金融機関の提示条件、社債の利回り等を保管 |
「グループ一律で1%」といった安易な設定は、監査で必ず根拠を問われます。
筆者が見た範囲では、期間帯を3〜4区分し、直近の借入条件をもとに設定する例が一般的でした。
監査の現場で使う英語は「監査の英語表現|BIG4の現場で実際に使う用語と型」でまとめています。
何から準備すればよい?実務と学習の進め方
実務の準備は、①契約の全社的な洗い出し、②リース期間と割引率の判断ルールの策定、③システムまたは表計算での計算基盤の整備、④財務指標への影響試算と関係者への説明、の順で進む。学習としてリース会計を理解したい場合は、日本の新基準・IFRS第16号・ASC
842のうち、まず単一モデル(日本・IFRS)を理解し、そのうえでASC
842の2分類を追加で覚えるのが効率的である。
実務の準備ステップ
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| ①契約の洗い出し | 全拠点の賃貸借・リース契約を収集し一覧化 | 3〜6ヵ月 |
| ②判断ルールの策定 | リース期間・割引率・少額リースの取扱いを社内で統一 | 1〜2ヵ月 |
| ③計算基盤の整備 | リース管理システムの導入または表計算での様式作成 | 3〜6ヵ月 |
| ④影響試算と説明 | 財務指標への影響を試算し、経営層・金融機関へ説明 | 1〜2ヵ月 |
①が全体の半分以上を占めます。
経理部門だけでは完結せず、総務・法務・各事業部を巻き込んだ横断プロジェクトになります。
学習の順番
| 順番 | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| ① | 使用権モデルの発想を理解する | すべての基準に共通する土台 |
| ② | リース負債と使用権資産の計算(現在価値) | 計算の型は3基準で共通 |
| ③ | 日本の新基準・IFRS第16号(単一モデル) | 例外が少なく理解しやすい |
| ④ | ASC 842の2分類と5つの分類基準 | US GAAP固有。USCPAで頻出 |
| ⑤ | 貸手の処理・セール&リースバック | 応用論点 |
USCPAを目指す場合でも、日本語で①〜③を理解してから④に進むほうが効率的です。
計算の型は共通なので、英語で新しく覚えるのは分類基準と用語だけになります。
英語で会計を学ぶ環境を整えるなら、予備校の教材を比較してから決めることをおすすめします。観点は「USCPA予備校おすすめ比較|費用・教材・サポートで選ぶ3校」に整理しました。テキストの実物を確認したい場合は、アビタスの無料説明会(アビタスの無料説明会で最新情報を確認する)で見ることができます。必要な英語力の目安は「USCPAの英語力|TOEIC何点から?600点台でも受かる理由」を参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 新リース会計基準はいつから適用されますか?
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から強制適用されます。3月決算の企業であれば2028年3月期からです。準備が整った企業は、2025年4月1日以後に開始する事業年度から早期適用できます。比較情報として前年度の数値を並べる必要があるため、実質的には強制適用の1年前から新基準ベースのデータを作れる状態が求められます。適用時期や経過措置の詳細は、ASBJ(企業会計基準委員会)の公表資料でご確認ください。
Q2. 中小企業も対応が必要ですか?
原則として対象外です。新基準の適用対象は、金融商品取引法の適用を受ける会社や会社法上の大会社などで、中小企業会計指針・中小企業会計要領を採用する中小企業には強制適用されません。ただし、上場企業の連結子会社である場合は、親会社の連結財務諸表を作成するために新基準ベースの数値が必要になります。また、将来の上場を検討している企業や、金融機関へ国際基準に近い財務情報を提出している企業では、任意で対応するケースもあります。自社が連結の範囲に入っているかを最初に確認してください。
Q3. オフィスの賃貸借もリースになりますか?
原則として該当します。新基準では、契約の名称ではなく「特定された資産の使用を支配する権利が一定期間にわたり移転しているか」で判定します。特定のフロアや区画を排他的に使用できるオフィス・店舗・倉庫の賃貸借は、この要件を満たすため、使用権資産とリース負債を計上することになります。一方、「空いている場所を使う」形の駐車場契約や、資産が特定されないクラウドサービスは該当しない可能性があります。判定は契約書の文言に依存するため、契約ごとの読み込みが必要です。
Q4. 使用権資産とリース負債は金額が同じですか?
開始日時点では、多くの場合ほぼ同額になりますが、常に一致するわけではありません。リース負債は「残りのリース料の現在価値」で計算し、使用権資産はそこに「開始日までに支払ったリース料」と「当初直接費用(仲介手数料など)」を加え、「受け取ったリース・インセンティブ(フリーレントなど)」を差し引いて算定します。したがって、前払家賃や仲介手数料がある場合、使用権資産のほうが大きくなります。また開始後は、負債が利息法で、資産が定額償却で減るため、両者の残高は次第にずれていきます。
Q5. 日本の新基準とUS
GAAPのリース会計は同じですか?
オンバランスする点は同じですが、借手の費用計上が違います。日本の新基準とIFRS第16号は単一モデルで、すべてのリースを「使用権資産の償却費+リース負債の利息費用」の2本立てで計上し、費用は前厚後薄になります。一方、US
GAAP(ASC 842)は借手の2分類を維持しており、operating
leaseに分類された場合は「単一のリース費用」を毎期定額で計上します。キャッシュフロー計算書でも、ASC
842のoperating
leaseは支払額の全額が営業活動に区分されます。USCPAの試験ではこの2分類が問われます。
Q6.
短期リースや少額リースは計上しなくてよいのですか?
免除規定があります。リース期間が12ヵ月以内の短期リース(short-term
lease)は、3基準とも計上しない選択が認められています。少額リースについては、日本の新基準に一定金額以下の契約を計上しなくてよい規定があり、IFRS第16号にも少額資産の免除(目安として1件5,000米ドル程度)があります。一方、US
GAAP(ASC
842)には少額資産の免除規定がなく、実務上は重要性の判断で対応します。日本基準の具体的な金額要件は適用指針に定められているため、最新の指針をご確認ください。
Q7. USCPAの試験ではリースはどのくらい出ますか?
FAR(財務会計)の頻出論点で、多肢選択式に加えてTBS(記述式問題)でも出題されます。典型は、リース料と割引率を与えられてリース負債の現在価値を計算し、償却表を作り、各期の仕訳と費用を算定する形式です。US
GAAP(ASC
842)の学習で押さえるべきは、①借手の5つの分類基準、②リース負債と使用権資産の当初測定、③finance
leaseとoperating
leaseの費用計上パターンの違い、④貸手の3分類、⑤セール・アンド・リースバックです。日本語で使用権モデルの発想と現在価値計算を理解しておけば、英語では分類基準と用語を追加するだけで済みます。
まとめ
リース会計の新基準について、要点を整理します。
- 新基準の核は「使用権モデル」。借りている資産を使う権利を資産として計上する
- 日本の新基準(企業会計基準第34号)は2027年4月1日以後に開始する会計年度から強制適用、2025年4月1日以後開始から早期適用可。3月決算なら2028年3月期から
- リース負債=残りのリース料の現在価値、使用権資産=リース負債+前払リース料+当初直接費用−インセンティブ
- 費用は前厚後薄になり、営業利益とEBITDAは改善、自己資本比率とROAは低下する
- 日本・IFRSは単一モデル、US GAAP(ASC
842)は借手の2分類を維持。operating leaseは定額の単一費用 - 実務の難所は仕訳ではなく、①契約の洗い出し ②リース期間の判断
③割引率の設定の3つ - 学習は単一モデル→ASC 842の2分類の順が効率的
リース会計は計算の型さえ作れば、あとは機械的に処理できる論点です。
難しいのは、どの契約がリースに該当し、リース期間を何年と判断するかという「入口の判断」のほうです。
実務で対応する立場の方は、まず自社の賃貸借契約を拠点単位で一覧化するところから始めてください。学習目的の方は、この記事の3年・年1,200万円の数値例を自分で計算してみると、使用権モデルの感覚がつかめます。
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受講料大幅軽減 - 日本の公認会計士試験指導実績を活かした
会計基礎解説 - 新設校ならではの最新設備と学習環境




