この記事でわかること
- 簿記2級・1級を持っていると、USCPAの勉強時間がどれだけ短縮できるか(科目別の試算)
- 簿記の知識がそのまま活きる論点と、簿記とUSCPAで考え方が違う論点(US GAAPと日本基準の差)
- 簿記1級・2級・3級・なしの4段階で、FARの学習に入る前の準備がどう変わるか
- 「簿記を先に取るべきか」の判断基準|簿記の学習に時間をかけすぎない目安
- 大学で会計を学びアビタスで合格した筆者の科目別の実績と、簿記の知識が効いた場面・効かなかった場面
著者情報:しわすゆう|USCPA(米国公認会計士)。大学在学時にアビタスのUSCPA講座を受講しUSCPAを取得。新卒でBIG4監査法人に就職し会計監査を3年経験。現在はコンサル会社に勤務。
最終更新日:2026年8月28日
「簿記2級を持っているとUSCPAの勉強は楽になるのか」「簿記1級ならどれくらい短縮できるのか」と考えていませんか。
結論から言うと、簿記2級の知識があるとUSCPA全体の勉強時間を200〜300時間、簿記1級なら300〜400時間程度短縮できます。効果が最も大きいのはFAR(財務会計)で、簿記2級で100〜150時間、簿記1級で150〜200時間が減る一方、AUD・REGへの効果は限定的です。
簿記とUSCPAは「会計の考え方」を共有しているため、仕訳・財務諸表・原価計算の土台があるだけでFARの序盤が別物になります。
筆者は大学で会計を学び、簿記2級相当の知識でアビタスに入りました。
FARは約350時間で済みましたが、簿記の知識がほぼ効かないREGには約400時間かかっています。
この記事では、簿記のレベル別に短縮効果を科目ごとに試算し、簿記が効く論点・効かない論点を整理します。
簿記2級・1級でUSCPAの勉強時間はどれだけ減る?結論は「200〜400時間、主にFAR」
簿記2級でUSCPA全体の勉強時間が200〜300時間、簿記1級で300〜400時間短縮できるのが目安です。短縮の大半はFARで生じ、AUD・REG・選択科目への効果は50〜100時間程度に留まります。
USCPAの標準的な勉強時間(1,200〜1,500時間)を起点に、簿記のレベル別に試算します。
| 科目 | 簿記なし | 簿記3級 | 簿記2級 | 簿記1級 | 短縮の理由 |
|---|---|---|---|---|---|
| FAR | 450〜500時間 | 400〜450時間 | 300〜350時間 | 250〜300時間 | 仕訳・財務諸表・連結・原価計算の土台が共通 |
| AUD | 350〜400時間 | 350〜400時間 | 300〜350時間 | 300〜350時間 | 財務諸表の理解が監査手続の理解を助ける程度 |
| REG | 350〜400時間 | 350〜400時間 | 350〜400時間 | 330〜380時間 | 税法は日本の簿記とほぼ対応しない |
| 選択科目 | 250〜300時間 | 250〜300時間 | 220〜270時間 | 200〜250時間 | BARなら管理会計(1級)が効く |
| 合計 | 1,400〜1,600時間 | 1,350〜1,550時間 | 1,170〜1,370時間 | 1,080〜1,280時間 | ― |
※標準勉強時間(アビタス公式:1,200〜1,500時間)と合格者の体験に基づく目安です。英語力・学習法で±200時間程度は変動します。
数字で見ると、簿記2級と1級の差(約100時間)より、簿記なしと2級の差(約250時間)の方が大きいことが分かります。
つまり「USCPAのために簿記1級を取る」必要はなく、2級レベルの知識で短縮効果の大半は得られます。
USCPA全体の勉強時間の目安は「USCPA合格に必要な勉強時間と効率的な勉強法|科目別の目安」で解説しています。
簿記の知識をUSCPAの学習にどうつなげるかは、講座の設計(日本語で理解→英語で演習)で大きく変わります。
簿記の知識を前提にした学習の進め方は、アビタスの無料資料請求でテキストのサンプルを見ると「簿記で見た論点がどう扱われているか」が確認できます。
簿記の知識がそのまま活きる論点|FARの前半は「簿記の英語版」
簿記2級の商業簿記・工業簿記で学ぶ仕訳、決算整理、財務諸表、原価計算、連結の基礎は、FARの前半とほぼ重なります。簿記で理解済みの論点は「英語の用語に置き換える」作業だけで済み、講義を1.5〜2倍速で回せます。
| 簿記の論点 | USCPAでの対応 | 活きる度合い |
|---|---|---|
| 仕訳・勘定科目 | FARの基礎。Debit/Creditと勘定科目の英語名 | 高い。用語の置き換えだけ |
| 決算整理(減価償却・引当金・経過勘定) | FARのAccruals、Depreciation、Allowance | 高い。考え方は同じ |
| 財務諸表の構造(B/S・P/L・C/F) | FARのBalance Sheet、Income Statement、Cash Flow | 高い。表示区分の違いに注意 |
| 連結会計(2級・1級) | FARのConsolidation | 高い。1級なら持分法・のれんまで対応 |
| 原価計算(工業簿記) | BARの管理会計(選択科目でBARを選ぶ場合) | 中〜高。1級の原価計算はBARに直結 |
| キャッシュフロー計算書(1級) | FARのStatement of Cash Flows | 高い |
筆者の体験|簿記の知識が効いた場面
筆者はFARの序盤で、講義を聞きながら「これは簿記で見た論点の英語版だ」と処理できる場面が続きました。
減価償却(Depreciation)、引当金(Allowance)、経過勘定(Accruals/Deferrals)は、日本語の仕訳が頭にあるので、英語の用語を当てはめるだけで問題が解けました。
この段階では講義を1.5倍速で流し、演習に時間を回せたため、FARの前半3分の1は想定の半分の時間で終わった感覚です。
逆に言えば、簿記の知識がない人はここで「会計と英語を同時に学ぶ」ことになり、FARの序盤で失速しやすくなります。
FARの内容は「USCPAのFARとは|出題範囲・形式・難易度を1回合格者が解説」で、勉強法は「FARの勉強法と必要勉強時間」で解説しています。
簿記とUSCPAで考え方が違う論点|US GAAPの差に注意
簿記の知識がかえって邪魔になる論点もあります。収益認識(5ステップ)、リース(借手の資産計上)、政府会計・NPO会計、税効果の細部、包括利益の表示などは、US GAAP特有の処理があり、日本基準の感覚で解くと間違えます。
| 論点 | 日本基準(簿記)の感覚 | US GAAPでの扱い | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 収益認識 | 実現主義・引渡基準の感覚 | 5ステップモデル(契約の識別→履行義務→取引価格→配分→充足) | 簿記の感覚を一度捨てて、5ステップで考え直す |
| リース(借手) | オペレーティングリースは費用処理の感覚 | 原則としてすべて資産・負債計上 | 簿記2級の感覚が邪魔になりやすい |
| 政府会計・NPO会計 | 簿記に存在しない | FARの独立した論点。日本人が最も苦手 | 簿記の知識は効かない。ゼロから |
| 包括利益 | 1級で一部 | OCIの構成項目と表示が詳細 | 2級ではほぼ未学習 |
| 減損 | 日本基準の2段階判定 | 資産グループ・回収可能性の判定が異なる | 手順の違いを意識 |
| 税効果会計 | 1級で学習 | 繰延税金資産・負債の考え方は共通だが、評価性引当の扱いなど細部が違う | 1級の知識は土台になる |
筆者の体験|簿記の知識が効かなかった場面
筆者がFARで最も時間を取られたのは政府会計・NPO会計です。
簿記にはまったく存在しない論点で、日本の会計の感覚が一切通用しませんでした。
簿記の知識で短縮できた時間の一部は、ここで戻された感覚があります。
REGは日本の税法とも簿記とも対応しないため、簿記2級・1級のどちらでもほぼ短縮効果はなく、用語のリスト化からやり直す必要がありました。
「簿記があるから楽」と思っていると、FARの後半とREGで想定とのズレに驚くので、簿記の効果は「FARの前半」に限定して考えておくのが安全です。
政府会計の攻略は「USCPA FAR政府会計・NPO会計の攻略|苦手論点の最短対策」で、REGは「REGの勉強法と必要勉強時間」で解説しています。
簿記のレベル別|USCPA学習に入る前の準備
簿記1級・2級保有者はそのままFARに入ってよく、簿記3級は2級レベルの商業簿記(連結・税効果の基礎)を市販テキストで2〜4週間補うと効率が上がります。簿記なしの人は、簿記2級テキストを1周してからFARに入ると、会計と英語を同時に学ぶ負荷を避けられます。
| 簿記のレベル | USCPA学習前の準備 | 準備の所要 | FARの入り方 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 不要。US GAAPとの差だけ意識 | 0 | 講義1.5〜2倍速、演習中心 |
| 2級 | 不要。連結・税効果は復習程度 | 0〜1週間 | 講義1.5倍速、演習中心 |
| 3級 | 2級の商業簿記(連結・税効果・本支店)を市販テキストで補う | 2〜4週間 | 前半は1.5倍速、連結以降は通常速度 |
| なし | 簿記2級テキストを1周(試験は受けない) | 3〜5週間 | 通常速度で講義→即演習 |
ポイントは、簿記の「試験」を受ける必要はないということです。
必要なのは知識であって資格ではなく、簿記2級の市販テキスト(1,000〜2,000円台)を1周するだけで、FARの序盤の負荷は大きく下がります。
簿記の学習に2ヵ月以上かけてUSCPAの開始が遅れるのは本末転倒なので、準備は最長5週間を目安にしてください。
市販教材の使い方は「USCPAの市販テキスト・参考書まとめ|独学できる範囲と限界」で解説しています。
簿記1級を先に取るべきか?判断基準は「目的」
USCPAの勉強時間短縮だけが目的なら、簿記1級を先に取る必要はありません。2級レベルの知識で短縮効果の大半が得られ、1級の学習(500〜700時間)はUSCPAの短縮分(2級比+100時間)を大きく上回るからです。1級を取る価値があるのは、日本基準の経理でのキャリアも並行して重視する場合です。
| 目的 | 簿記1級を先に取る判断 | 理由 |
|---|---|---|
| USCPAの短縮だけ | 不要 | 1級の学習時間>USCPAの追加短縮分 |
| 日本基準の経理でも評価されたい | 検討の価値あり | 1級は国内の経理・会計事務所で評価が高い |
| 日本の公認会計士も視野 | 別の判断 | 会計士試験の学習が1級を包含する |
| すでに1級を持っている | そのまま活かす | 連結・原価計算・税効果がFAR・BARに直結 |
筆者の周囲では、簿記1級を持ってUSCPAに入った人はFARの連結と選択科目BARの管理会計で明確に速く、「1級の原価計算がそのままBARだった」と話していました。
一方で、「USCPAのために1級を取ろう」として1級に1年かけた人は、結果的にUSCPAの開始が1年遅れ、総合的な時間は増えていました。
簿記はUSCPAの「助走」であって「前提資格」ではありません。
簿記1級とUSCPAの比較は「USCPAと簿記1級どっち?レベルと市場価値の比較」で解説しています。
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簿記保有者がUSCPAの計画を立てるとき|3ステップ
①自分の簿記レベルでFARの短縮見込みを試算する ②US GAAPと日本基準の差がある論点を先にリスト化する ③REG・選択科目は簿記の効果を見込まず標準時間で計画する、の3ステップで、簿記の効果を過大評価も過小評価もしない計画が作れます。
- FARの短縮を試算する:簿記2級なら300〜350時間、1級なら250〜300時間を起点に、週の学習時間で期間を逆算する
- 差がある論点をリスト化する:収益認識・リース・政府会計・包括利益は「簿記の感覚を捨てる論点」として先に把握する
- REG・選択科目は標準時間で:簿記の効果を見込まず、REGは350〜400時間、選択科目は250〜300時間で計画する。BARを選ぶ場合のみ管理会計の短縮を見込む
簿記の知識があると、FARの学習開始から受験までの期間を短く設定できるため、1科目目の受験日を学習開始から4〜5ヵ月に前倒しできます。
早く1科目に合格すると学習のリズムができ、残り科目の効率も上がります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 簿記2級があるとUSCPAは何時間短縮できますか?
全体で200〜300時間、主にFARで100〜150時間が目安です。仕訳・決算整理・財務諸表・連結の基礎がFARの前半と重なるため、講義を1.5倍速で回して演習に時間を回せます。AUDは50時間程度、REGと選択科目はほぼ短縮効果がありません。
Q2. 簿記1級があるとさらに短縮できますか?
簿記2級より100時間程度多く短縮でき、全体で300〜400時間が目安です。1級の連結・税効果・キャッシュフロー計算書・原価計算は、FARの後半とBAR(選択科目)に直結します。ただし1級の学習自体に500〜700時間かかるため、USCPAの短縮だけを目的に1級を先に取る合理性はありません。
Q3. 簿記の知識がなくてもUSCPAは受かりますか?
受かります。ただし会計と英語を同時に学ぶ負荷でFARの序盤に失速しやすいため、簿記2級の市販テキストを3〜5週間で1周してからFARに入ることをおすすめします。簿記の試験を受ける必要はなく、知識だけあれば十分です。
Q4. 簿記の知識が邪魔になることはありますか?
あります。収益認識(5ステップモデル)、リース(借手の資産計上)、減損の判定手順などはUS GAAPと日本基準で処理が違い、簿記の感覚で解くと間違えます。政府会計・NPO会計は簿記に存在しない論点で、簿記の知識は効きません。「簿記の感覚を捨てる論点」を先にリスト化しておくと混乱を防げます。
Q5. 簿記3級だけの場合はどうすればいいですか?
2級の商業簿記の範囲(連結・税効果・本支店会計など)を市販テキストで2〜4週間補ってからFARに入ると効率が上がります。3級の知識で仕訳と財務諸表の基本は押さえられているので、2級の範囲だけを追加すれば、簿記2級保有者に近い短縮効果が得られます。
Q6. 簿記1級保有者はUSCPAの選択科目に何を選ぶべきですか?
BAR(経営分析)が最も相性が良いです。1級の原価計算・管理会計がBARの管理会計にそのまま活き、選択科目の勉強時間を200〜250時間程度に短縮できます。ただし選択科目は行きたい領域(IT系ならISC、税務ならTCP)で選ぶのが基本で、簿記の相性だけで決める必要はありません。
Q7. 簿記とUSCPA、どちらを先に取るべきですか?
目的次第です。USCPAが目標なら、簿記は2級レベルの知識を市販テキストで3〜5週間で入れるだけで十分で、簿記の試験を受ける必要はありません。日本基準の経理でも評価されたい、会計の学習が初めてで適性を確かめたい、という場合は簿記2級の受験を挟む判断もありますが、USCPAの開始を数ヵ月以上遅らせない範囲にしてください。
まとめ|簿記2級で200〜300時間短縮、効果はFAR前半。1級は「前提」ではなく「助走」
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 簿記2級でUSCPA全体の勉強時間を200〜300時間、1級で300〜400時間短縮。効果の大半はFAR
- 簿記が活きるのは仕訳・決算整理・財務諸表・連結・原価計算(BAR)。効かないのはREG・政府会計・US GAAP特有の論点
- 簿記なし→2級の差(約250時間)は、2級→1級の差(約100時間)より大きい。2級レベルの知識で短縮の大半が得られる
- USCPAのために簿記1級を先に取る必要はない。準備は最長5週間、簿記の試験は不要
- 計画はFARだけ短縮を見込み、REG・選択科目は標準時間で。1科目目の受験日を4〜5ヵ月に前倒しできる
簿記の知識は、USCPAの入口を楽にする助走です。
助走に時間をかけすぎず、FARの前半で効果を使い切り、簿記の効かない論点は標準時間で計画してください。
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